第23話   真夏のクロダイ釣り   平成16年09月12日  

ある年のお盆過ぎの頃からか、数年続けて同じ頃大型黒鯛が釣れた事があった。そのある年と云うのは、昭和55816日が最初でそれから毎年816日から20日までの間に決まって周りの釣り人がまったく釣れな云うのに何故か同じ場所でたった一日のみだけ自分に大型の黒鯛(尺五寸以上)が釣れた。

その場所というのは、今年から工事の為入る事が出来なくなった北突堤の白灯台手前左側に階段の直ぐ先の場所である。ここは海底から女鹿石が5mほどに渡って高く積んであり、沖に向かっては急激に深く沈んでいる場所である。この潮通しの良いゴロタ石のかけあがりに黒鯛が付いていたのである。

竿はヘラ竿改造の中通し3間半(6.4m)に道糸1.5号、ハリス1号にオキアミを付けて放り込む。お盆の頃は一年中で最も蒸し暑く、風も無い変わりに天候には、恵まれる季節でもある。少しでも暑い時間帯を避けて、いつも夕方の4時半頃に出掛ける。500円の付け餌用のオキアミブロックを餌分を少し残しも、細かく砕いて少し大粒の海砂をまぶして増量した撒餌を潮の流れを計算して時々沖目に放り込んでやる。この当時まだ粉末の撒餌など、まだ普及していなかった時代であった。

撒餌を始めると決まってフグの猛攻が始まる。この季節のフグの猛攻は凄まじい物で驚愕に値する。そのフグの猛攻に耐えたまたま餌がたまたま底に届いた時に黒鯛が釣れると云う運と不運の釣である。この時期は盆休みの終盤という事もあつて、連日周囲には毎回10人ほどの釣り人がいた。

撒餌を開始して30分も過ぎた5時過ぎに最初の当たりが来た。最初に釣れたのは、37cmの良型のシンジョ(アイナメ)である。それからまた30分を過ぎた頃に35cmの黒鯛。また、しばらく立つと妙な当たりが穂先に出る。竿先にフグの様なピクピクと云う微妙に当たりである。それからしばらくして穂先が少し曲がる。そして戻る。典型的な大型黒鯛の当たりであった。次の当たりの瞬間に大きく合わせた。と同時に黒鯛は急に沖へと走った。沖に出たらこっちのものである。

「人が釣れない時に自分だけが釣る」と云う絵に書いたような心地良さを満身に受けて黒鯛とのやり取りをする。ハリスの細さをヘラ竿改造の中通しの胴の柔らかさで補いながら、魚とのやり取りを堪能する。右に左に走る黒鯛を軽くいなしながら約30分ほどかけて魚を取り込む。釣人の多くは、誰でも他人より少しでも多く1cmでも5mmでも大きなものを釣りたいと思っているものである。が、細ハリスで魚とのやり取りをじっくりと時間をかけてゆっくり楽しむのも釣りのひとつと思っている。